(原著論文)

通級による指導対象者数変化の数理モデル
― 発達障害のある児童生徒の増加傾向と予測の試み ―


要旨:1993年に制度化された通級による指導は、通常学校における対応の充実を一つの柱とした特別支援教育制度への制度改正の前年に日本で「発達障害」として表現されるADHD、学習障害、および知的な発達の遅れを伴わない自閉症を対象として明確にするようになった。通級による指導の対象者全体の数は一貫して増加してきたが、「発達障害」を対象カテゴリーとして独立させて以降は一層顕著な増加傾向が続いている。本論文では、通級による指導の対象者についてADHD、学習障害、および自閉症の増加傾向を多項式近似による数理モデルで提示するとともに今後の推移の予測を示した。その結果、通級による指導の対象となっている「発達障害」のある児童生徒の顕著な増加傾向を予測式として明確に記述できた。現在のペースでの増加傾向が続くと、2030年代前半には学校における「発達障害」の出現率として推定されている6〜6.5%に到達すると推測された。「発達障害」のある児童生徒は、そのすべてが常に特別な支援を必要としているわけではないにも関わらず、近い将来に全員が対象になるほどの増加傾向があることは今後の制度展開を見直す必要性を示唆するものである。特別支援教育制度が国際的なインクルーシブ教育の概念をふまえようとするのであれば、「通常学校での障害児教育の拡大」とは異なる視点に立脚する必要性があること、そして通常学校・通常学級における「標準」の修正が避けられないことを論じた。

キーワード:通級による指導   数理モデル   発達障害


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